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IC・電子部品 2021.10.15

LED照明を普及させた特徴あるLEDデバイス要素技術

Grand Joint Technology Ltd 大西 哲也

LED照明を普及させた特徴あるLEDデバイス要素技術

 

 

1. はじめに

 世界中でLED照明がこの10数年の間に広く普及したのは、LEDダイとLED実装の改善、改良により、輝度と信頼性が向上し、LEDランプの小型化、軽量化に伴い、コスト的にも使いやすくなったからである。

 当初のLED電球は電源部品と放熱目的で重いため、取り付けた古い天井が抜けてしまったそうである。

 最近では、フィラメントタイプ白熱灯と同じ大きさで、昔風のあかりの再現ができているものもある。

 LED照明を明るくし普及させた、特徴あるLEDダイと実装要素技術しては、

① 特徴あるワイヤボンディング手法とプラズマクリーニング
② 上面金属電極の削減
③ フリップチップ実装
④ 窒化アルミAlN基板の採用
⑤ 黄変対応・ガスバリア性シリコーン
⑥ フィルムアシスト・コンプレッションモールド・シリコーンレンズ
⑦ High Voltage LED/オンウエハ クラスタセル

などがある。

 

 

 

2. LEDワイヤボンディングとプラズマクリーニング

 樹脂封止LEDには、光透過性の透明樹脂が主に使われている。

 フィラーの入っていない大きな熱膨張係数や水分とイオンの透過性などの物性により、熱応力や機械応力が加わるとAuワイヤ剥がれが発生しやすい。

 当初のアジア製では、ワイヤ剥がれ対策として、●写真1のように、信じられないほどボールを極端に押しつぶしてワイヤボンディングした場合や、●写真2のように、丁寧に2ndボンド上に、手でAgペーストを塗布するといったことがなされていた。

 日本メーカーの車載用LEDデバイスのワイヤボンドでも、ボールサイズや形状の管理は完全ではない(●写真3)。

 また青色LEDでは、シリコーン系の材料が使われ、工程がシロキサン汚染されやすく、スタッドバンプの上に2ndボンドを行う対策(●写真4)や2ndステッチの上に再度スタッドバンプをボンディングすることもある。

 ●写真5は、米国系の高輝度デバイスで、LEDダイ上のスタッドバンプとリバースワイヤボンドを採用し、オンウエハ蛍光体塗布品の信頼性を確保している。

 シリコーン樹脂のアウトガスやAuメッキ表面のクリーニングとして、酸素プラズマ、アルゴンプラズマが使われたことにより、LEDのワイヤ剥がれ不良が低減した。

 また懐中電灯のような用途では、ワイヤの影が映ることもあり、光を遮るのを極力避けるためにワイヤーループを変形させたフックワイヤボンド(●写真6)も採用された。

 ●写真7は輝度をさらに得るため、12個の高輝度LEDダイを、ワイヤボンド技術を駆使してマルチダイ実装したものである。

 日本メーカーでは高輝度大型ダイが低コスト製造対応できなかったため、たくさんの小型LEDダイをワイヤボンド技術で直列接続したCOBモジュールが採用された(●写真8)。

 

 

 

3. 上面金属電極の削減

 ●写真9-aはバーチカルLEDと呼ばれる高輝度の大型シングルダイを搭載した欧州メーカーの白色LEDデバイスであり、上面のワイヤボンド電極1つからLED上面に金属配線を引き出しているが、この上面金属配線は、光を反射し邪魔をする。

 ●写真9-bは、その上面引き回し電極を低減し、上面電位を、丸いビアポストを介して供給し、光を遮断せずに高輝度を達成し、より明るくなった。

 

 

 

4. フリップチップFC実装

 ●写真10はLEDダイ自身に反射層を設け、上面金属電極を廃止し、上面電極をビア16個で接続した初期フリップチップFC構造の2006年頃における高性能5W対応デバイスである。

 フリップチップ化により、1.7倍、上部電極構造変更で1.4倍明るくなり、光取り出し効率が大幅に改善されたと報告されている。

 LED上に25個のスタッドバンプを打ち、平滑度、膨張係数で都合の良い、6角形シリコンインタポーザの上に日本がリードしている低温超音波フリップチップ実装設備で金‐金接続を行っている。

 6角形のシリコンインタポーザの切り出しは、ステルスダイシング技術である。

 シリコンインタポーザと外部リードはワイヤボンディング接続。

 ●写真11は、さらにコスト対応、高性能高輝度を得るため、フリップチップFC実装技術が進化したもので、36個のスタッドバンプによる超音波フリップチップ接続、フィラー入りアンダーフィル後に、レーザリフトオフ法でサファイアを除去、発光面の表面を荒らしてから蛍光体プレート搭載、さらに蛍光体側面に白色樹脂フィレット形成まで行っている。

 スタッドバンプは途中から、LEDウエハ側ではなく、アルミナ系セラミック基板電極側に打たれている。

 一部では、2色・2層の蛍光体プレートも使われた。

 ●写真12は、さらにマルチ4ダイFC実装が行われ、放熱性改良のため、窒化アルミAlN基板上に、計146個(36x4+2)のスタッドバンプを使ってフリップチップ実装されている。

 

 

 

5. 窒化アルミAlN基板

 写真12、●写真13のような高輝度高出力になると、熱対策のため、基板もアルミナ系セラミックではなく、熱伝導の良い日本の窒化アルミAlN材を使った台湾製基板が採用されている。

 AlNは熱的には素晴らしい特性を示すが、車載関連のパワーデバイス用途には、耐衝撃性などの問題で窒化ケイ素SiNが使われる。

 

 

 

6. シリコーン材料とモールド方式

 シリコーン樹脂はエポキシ樹脂に比べて、透明性、耐黄変性に優れ高輝度LEDに採用されている。

 屈折率がより高く、耐黄変性に優れ、ガスバリア性の高いシリコーン樹脂を日本メーカーがLED用に開発してきたことは、LED照明の普及に大きく貢献している。

 写真10の世代までは、プリモールドされたドーム型透明キャップをゲル状シリコーンで固定していたが、その後継機種(●写真11)からは、シリコーン樹脂封止と同時にレンズ形成できるフィルムアシスト・コンプレッションモールド技術を採用し、低コストで光を前に出すことができた(●写真13)。

 シリコーン樹脂、コンプレッションモールド装置、離型フィルムも日本の得意技術が多く採用されている。

 

 

 

7. High Voltage(HV) LED/オンウエハ クラスタセル

 欧州でよく見かけるキャンドルタイプ電球では暖かい色を出すため、1つのセラミックパッケージの中に、オンウエハ16直列接続赤色クラスタアレイLEDダイ2個と25個の青色LED素子がウエハ上で直列接続されたHV LEDクラスタアレイ(白色部)2個を配列している(●写真14)。

 LEDへの印加電圧が高いため、電源回路がよりシンプルになり、白熱電球とほぼ同じ大きさの電球形状で小型化された。

 オランダの技術者とマーケティング担当の照明へのこだわりで、ワインを飲みながらの技術討論が聞こえてきそうな優れたLED電球傑作である。

 ●写真15は、部品点数最小の小型シンプルなもので、台湾製オンウエハ接続クラスタアレイHV LEDダイ2個を使用している。

 

 

 

 特徴あるLEDダイと実装の要素技術の変遷を示したが、多種多様のダイと実装技術を使い分け、日本の材料、装置を導入したことで、LEDランプのコストパフォーマンスと品質が向上し、LED照明が広く普及した。

 

 

 

写真1 IC実装工場では信じられない、初期LEDボンディング形状

 

 

 

写真2 2nd ワイヤ剥がれ防止Agペースト塗布

 

 

 

写真3 車載用LED Auボール(日本)

 

 

 

写真4 スタッドバンプ上の2ndボンド

 

 

 

写真5 バーチカルタイプLEDX線イメージ

 

 

 

写真6 フックワイヤボンド

 

 

 

写真7 マルチ12ダイ X線イメージ

 

 

 

写真8 日本メーカーLED電球COBモジュール

 

 

 

写真9 バーチカルタイプLEDダイ表面電極の低減

 

 

 

写真10 初期高性能フリップチップ

 

 

 

写真11 サファイア除去後に蛍光体プレートが搭載されたフリップチップ実装

 

 

 

写真12 高輝度マルチダイFCデバイス

 

 

 

写真13 バーチカルタイプLEDデバイスの外観

 

 

 

写真14 オランダのLED電球2W 2700K 2011年4Q

 

 

 

写真15 台湾製HV LEDを採用した、シンプルLED

 

 

Grand Joint Technology Ltd 大西 哲也

国内唯一の実装技術専門誌!『エレクトロニクス 実装技術』から転載。 最新号、雑誌の詳細はこちら

http://www.gicho.co.jp/ept/
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