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その他 2018.07.02

DesignCon / IBIS Summit 2018

エレクトロニクス 実装技術 編集部

DesignCon / IBIS Summit 2018

1. はじめに

 例年通り、今年も1月30日から2月1日までの3日間において、アメリカ、シリコンバレーの Santa Clara市のSanta Clara Convention Center(図1)で、DesignCon が開催された(図2)。また、最終日の翌日の2月2日には、これも例年通りIBIS Summit が開催された。 今年も、このDesignCon と IBIS Summit の報告をする。

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図1 DesignCon 2018会場

(VTAのGreate America Stationより撮影)

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図2 プログラムブック

 DesignConは以前は西のシリコンバレーと東のボストンエリアで、年2回、DesignCon West と DesignCon East として開催されていたが、ずいぶん前に年に1回、シリコンバレーのSanta Clara での開催になった。

 また、発表論文も、以前はレジストレーション時に CD-ROM で渡されていたが、最近は、ネットアドレスとパスワードが示され、各自がダウンロードするようになっている。

 DesignCon では、発表が多く、他にもスポンサー企業が提供するセミナーなど、多い時には、同時に10本以上のセッションが開催される(図 3)。

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図3 同時に10以上のセッションが開催されている

 このため、事前に発表資料に目を通し、どのセッションに出席するかをあらかじめ決めておかないと、関心のあるセッションを逃してしまうことも度々である。

 主催者側でも、出席者がおのおのどのセッションを受けるかの管理ができるようなスマートフォン用のアプリを出席者に配布し、便利を図っている。

 このアプリには、発表タイトル、発表者、テーマ分野、簡単な内容紹介が、発表時間ごとにまとめられている。

 

2. アクセスとホテル

 例年、DesignCon の会場となっている Santa Clara Convention Center には、Hyatt Regency Santa Clara ホテルが隣接していて、DesignConの参加申し込みと同時にホテルの予約が取れるようになっている(図4)。

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図4 ホテルのロビー(すべてDesignConの参加者)

 同時に、このホテルでは、DesinCon の展示会への出展各社が、おのおの部屋を取り、特定ユーザーに対するデモや、技術打ち合わせ、商談などの業務にも使われる(図 5)。

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図5 ずらりと並んだホテルのスイートデモ室

 このため、DesignCon開催中は、宿泊料も通常よりだいぶ高めに設定されている。また、道路を渡った向かいには、Hilton Santa Clareホテルもある。

 しかし、このような高級ホテルばかりではなく、会場から少し離れたところには、ホテルやモーテルなど、数多くの宿泊施設があり、これらの多くは、日本の旅行サービスネットから、日本語で予約することもでき、予算とサービスから、自由に宿泊施設を選ぶことができる。

 特に、Santa Clara Convention Center の前は、VTA(Valay Transportation Authrity)Light Railと呼ばれる市電のような公共交通機関の駅があり、Moutain View市、San Jose市、Almlock市を結 んでいる(図 6)。

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図6 VTA Light Rail 路線図

 このVTA Light Railを使うことにより、VTA 沿線のホテルはどこに泊まっても、レンタカーやタクシーを使わずに、非常に簡単にDesignCon会場にアクセスすることができる。

 また、このVTA Light RailはAir Port 駅では、San Jose空港の無料シャトルバスと接続しており、MoutainView駅では、San Fransisco 空港からのカルトレイン(Caltrain)と呼ばれる通勤列車と接続している(図 7)。

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図7 Cal Train

さらに、このVTA Light Railは、SanJose の日本人街に近い駅や、沿線にレストランも多く、レンタカーと違い安心してレストランで飲酒もできるので、非常に便利な交通システムである。

 

3. 空港からのアクセス

 Canta Clara Convention Centerに最も近い空港は、San Jose International 空港である。

 日本からは、ANAがB787で成田 ー San Jose直行便を運航している。以前はJALと提携しているAmerican Airが 成田 ー San Joseの直行便を運航していたが、今は運航していない。

 ANA 以外では、普通、ロサンジェルスで乗り換えて、San Jose空港へ行く。サンジェルス空港での乗り換えは、入国手続きと税関検査をした後、国内線ロビーへバスで移動し、セキュリティチェックをするなど、面倒なので、日本からサンフランシスコ空港へゆき、レンタカーで Santa Clara へ行く方法もある。

 サンフランシスコ空港からSanta Clara へは、渋滞がなければ、1時間程度のドライブであるが、空港でレンタカーを借りたり、初めての地で、慣れない右側運転など、レンタカーの利用も大変である。

 レンタカーを使うよりもタクシーの方が安心で、料金もレンタカーの保険やガソリン代を考えるとあまり変わらない。

 やはり、San Jose空港からでもサンフランシスコ空港からでも、会場やホテルにゆく手段としては、公共交通機関を利用することが一番便利で、安価である。
 San Jose空港からはVTA Light RailのAir Port駅までの無料シャトルバスが10〜15分間隔で運行されている。

 VTA Light Railはやはり10〜15分間隔で運行されているのでMountain View 行きに乗り、15分くらいでConvention Center(Great America駅)に到着する。

 料金は$2.25で乗る前に駅のホームにある自動販売機で、クレジットカードや現金で購入する(図 8)。なお、65歳以上のシニア料金は$1.00である。

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図8 ホームにあるチケット販売機

 チケットは2時間有効で、どの駅でも乗り降り自由で、途中下車もできる( 図 9 )。 このほか8時間有効なチケットもある。これを使えば、8時間以内であれば、往復乗車もできる。

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図9 Light Railのチケット

 駅に改札はなく、時々係員がチケットチェックに乗車しにくる。この時にチケットを持っていないと罰金を取られる。

 サンフランシスコ空港にはBART (Bay Area Rapid Transit)と呼ばれる電車がある。

 空港の International ターミナルのすぐ横に駅があり、日本から到着したら、歩いて BART の駅に行ける。

 BART は空港から、サンフランシスコのダウンタウン、リッチモンド、オークランド、フェアモントなどベイエリアの多くのところへ繋がっている。

 また、シリコンバレー方面には、隣のMillbrae 駅で、Caltrainと呼ばれるサンフランシスコからサンノゼまでの通勤列車に乗り換えることができる(図10)。

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図10 BART路線図

 BART のサンフランシスコ空港駅から Millbrae 駅間は、曜日や時間によっては、もう一つの駅 San Bruno 駅の3駅間を一方通行でしか運航していない。

 空港駅から乗車して、次の駅がSan Bruno 駅に着いた場合には、乗り換えて、サンフランシスコ空港駅行きに乗れば、1駅で、Millbrae 駅に着ける。

 BARTの乗車券はCLIPPERと呼ばれる日本の Pasmo のような、プリペイドカードしか使えない(図 11)。

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図11 Clipper Card

 このため、BART のサンフランシスコ駅では、自動販売機で、プリペイドカードとチャージ料金を払う。カードの料金は$3であるが、このカードは、BARTだけではなく、Caltrain や VTA にも使える。

 

4. DesignCon

 DesignCon は以前は4日間開催されていたが、2016年以降は3日間に短縮された。しかし、論文発表数は変わらず、その分、密度が濃くなっている。

 例年最初の1日は、最新技術のチュートリアルやパネルディスカッション、Boot Campと呼ばれる、1日フルの専門講座などが組まれている。

 また、初日の夜には、スポンサー企業による、コンベンション参加者と、展示会への出展者が自由に参加できウエルカムパーティが開催される。

 昨年と2015年には、近くにあるアメリカンフットボールのリーバイススタジアムを貸し切って開催されたが、今年はホテルのホールで開催された(図12)。

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図12 初日のウエルカムレセプション

 DesignCon では、セッションの連続で、多くの人がおのおののセッション会場に入っているため、あまり、他の方々と会う機会がない。

 この会場では、アルコールの助けもあり、初対面の人々と自己紹介をしながら、 情報交換をすることができる。今年はことのほか日本からの参加者が多く、初対面の名刺交換や、顔見知り同士で、「あなたも来ていたのですか」などの挨拶会となっている。

 今年もおよそ100弱の発表があり、この他、スポンサー企業による、セミナー、キーノート講演など盛り沢山で、場合によっては10以上の発表が並行して同時に行われる。

 発表は内容により、14の分野に分類されている。発表の内容が複数の分野にまたがっているものもあるが、分野は、

  1. チップ/パッケージ
  2. ミックスシグナル

  3. 光と電気

  4. 協調設計

  5. 基板/モジュール/パッケージ材料

  6. 基板設計/シミュレーションツール

  7. メモリと2.5D/3D設計

  8. 高速シリアルの最適化設計

  9. 高速シリアルの測定、解析

  10. 高速シリアル転送のイコライザ最適化

  11. PI

  12. EMI

  13. テスト、測定

  14. 配線のモデリングと解析

   となっている。

 この分野テーマは、その年の論文内容により、毎年少しずつ変わっている。

今年は、5のテーマが、これまでの「基板材料」から、「モジュール、パッケージ」が追加になった。

 また、「7メモリと2.5D/3D 設計」も新しいテーマである。

 逆に以前にあった「パラレルバス」関連のテーマは、DDR4 の開発が一段落した昨年からなくなっている。

 今年は、Appleの採用で注目されている FOWLP(Fan Out Wefer Level Package)をはじめとし、SiP(System in Package)が一般的になり、パッケージレベルでの信号特性検討が重要になってきたためである。

 同様に、パッケージ内配線板の特性や、 基板の特性で、ガラスクロスの影響や銅箔表面荒さの特性などに関する発表も多くあった。

 これは、昨年、56Gbps のシリアル転送や、PCI Express Gen4などの規格が決まり、実際の開発や評価が出て来たからである。

 注目することとして、IBIS に関する発表 の多さである。

 IBIS AMIの機能強化と開発環境が整備されたことにより、自分で IBIS AMI を開発してシミュレーションした事例や、 DDR4メモリーや概要が発表された DDR5メモリーがIBIS AMIモデルがないと解析が困難であると見通しから IBIShs の関心が高まっている。

 

 今年のDesignConでは、IBISに関する発表やセッションが18もあった。

 2日目と3日目の午後からは、展示会が併設される(図 13)。

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図13 展示会風景

 このため、発表セッションは昼休みとなり、12時から12時45分までのキーノート(図14)があるだけで、多くの出席者が、ランチとショーの見学ができるように配慮されている。

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図14 キーノート

 また、基本的にセッションは5時で終わり、5時から展示会が終わる6時までは、展示しているスポンサー企業から、ビールやワインがふるまわれ、一杯飲みながらリ ラックスして、展示を見たり説明を聞いたりするようになっている(図15)。

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図15 展示会場のビールタイム

 

5. IBIS Summit

 DesignCon が終了した翌日、金曜日には、これも例年通り、IBIS Summitが開催された。
 例年の DesignCon での IBIS Summit は常連の参加者が20数名で、この他発表者を含め、10〜15人程度の毎回変わる変わる顔ぶれが参加していた。

 私を含め、日本人の参加者は毎年2〜3名しかいないであった。

 しかし今年は、JEITA から、東芝の福場さんとリコーの村田さんからLPB(LSI Package Board)ファイルについてのプレゼンがあったり、日本から DesignCon への参加が多かったりで、のべで実に10名の日本人の出席があった(図 16、図 17)。

 

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図16 IBIS Summit

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図17 IBIS Summit ランチの日本テーブル

 さすがに常連の私の友人(アメリカ人)も「今年は何かあったのか、IBIS Summit Japanじゃないか」と驚いていた。 LPBについても、今年のDesignCon で、パッケージレベルでの電気特性が問題となっていた中、タイムリーな発表であった。

 これまで、中国や台湾、韓国などからの DesignConはの参加者に比べ、日本からの参加者が少なかったのであるが、来年以降も、今年のような日本からの参加者が多くなることを期待している。

 
 
 
 
Gichoビジネスコミュニケーションズ株式会社エレクトロニクス 実装技術 編集部

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